水耕栽培は土を使わずに本当に野菜ができるの?土耕栽培との比較

水耕栽培は、土を使わず水に液体肥料を溶かした「養液」に種や苗を入れて野菜を栽培する方法です。

土の栄養で野菜が育つことしか知らない人にとっては、土なしで野菜ができるなんてなかなか信じられませんよね。

実は、水耕栽培で育つ野菜は、土耕栽培で育つ野菜よりも成長が早いのです。それは、根が土に邪魔されることがなく、害虫や細菌の影響も受けないで育つことができるためです。

水耕栽培と土耕栽培の違いをみながら、水耕栽培で野菜が育つ理由をみていきましょう。

水耕栽培とは?

水耕栽培の歴史はまだ短く、19世紀にドイツの植物学者のユリウス・フォン・ザックスが発明したところから始まります。

日本では第二次世界大戦以後、駐留米軍によって植物工場として建設されて水耕栽培が開始されました。

とはいっても、人糞を肥料にしていた日本では、水耕栽培はあまり普及しませんでした。

ところが、食の安全や残留農薬の問題などが大きくなっていくにつれて、2009年から農水省、経産省合同で植物工場に補助金を出すことで普及活動が始まりました。

植物工場で行われている水耕栽培は、誰でも手軽にできる栽培方法として、今ではちょっとしたブームになっています。

農業従事者の高齢化や後継者不足の問題もあって、今後も水耕栽培はさらに発展していくでしょう。

水耕栽培とはどういうものか、じっくりみていきましょう。

土を使わず水で栽培する

ドイツ人のザックスが水耕栽培の方法を発明するまで、野菜を含む植物は糞尿や堆肥の腐食物で成長すると思われていました。

植物はリン、窒素、カリウムなどをイオン化したものを根が吸収して大きくなるので、必ずしも土が必要ではないことをザックスは発見したのです。

土を使わず、水にリンや窒素、カリウムなどの無機養分を含んだ液体肥料を入れて、直接、根に吸収させるだけで植物は成長していくことを発見しました。

これが水耕栽培の始まりです。

水だけ、または水+液肥

捨てがちな野菜のヘタや根っこを利用して野菜を再生する再生野菜(リボベジ)は、毎日、水を替えるだけで成長できます。

ネギやミツバが代表的なものです。

より良く野菜を生育させるためには、水に液体肥料を溶かした「養液」に根を入れて成長させます。この方法が水耕栽培の一般的な形です。

容器、土台

種や苗を入れる容器は、いらなくなった空き容器やガラス瓶、ペットボトル、お茶パック、スポンジなど多種多様です。水の重さに耐えられて、根が沈まない、高すぎない、土台がしっかりした容器にすることがポイントです。

空き容器・スポンジ

家にある空き容器やスポンジを利用してもいいですし、100円ショップでも購入できます。

水耕栽培キット(LED付きなども)

初心者には難しい野菜や失敗したくない人は、水耕栽培キットを利用すると手軽に水耕栽培を始めることができます。

種類は、水、液体肥料、種、容器のみがセットされたものから、LED電球やエアポンプ、自動運転機能がついたものまであります。

インテリアとしての水耕栽培キットも種類が豊富にあります。価格帯は300円台から何万円もかかるものまであるので、目的別にじっくり検討してから選ぶことをおすすめします。

バーミキュライト・ハイドロボールなど

水耕栽培でよく使われる言葉が培地です。培地とは、種が発芽するまでの寝床のようなものです。

水耕栽培の苗を支えるものとしても使われます。

四角く切ったスポンジでもいいですが、よりオシャレで栄養もとれる培地として最適なのが、バーミキュライトとハイドロボールです。

お店などで、観葉植物の鉢のなかに石のようなものが入っているのを見たことがありませんか。

それがバーミキュライトやハイドロボールです。

土よりも衛生的で臭いもなく栄養も期待できる培地です。

ただ、アスベストを含む、ということで敬遠する人もいますが、アスベストは長年、素手で触り続けることで問題になるもので、園芸用の少ない量ではほとんど問題になりません。

気になるようなら使わなくても構いません。

水耕栽培と土耕栽培の違い

続いて、水耕栽培が土耕栽培と何が違うのか、具体的に見ていきましょう。

土耕栽培では

土耕栽培では土が欠かせません。種や苗が成長しやすいように土壌をフカフカにして、害虫や病原菌に根がやられないように対策をたてて適宜、水やりもします。

結構な労力が必要ですね。

まず、水耕栽培とは違う土耕栽培の特徴をみていきましょう。

栽培スペースが必要

家庭菜園でやろうとすると畑を借りたり、プランターを用意することが必要です。キッチンの隅っこでもできる水耕栽培とは違って、栽培スペースが絶対に必要になります。

畑を借りるなら、賃料や地主さんへの心遣いも必要になってきますね。

よい畑、よい土づくりのために労力と経験が必要

土耕栽培を失敗しないようにするためには、よい畑、よい土づくりが必要ですが、そのためには気候や温度、台風対策など実際に経験して得てきた知恵が必要です。

もちろん、労力は絶対条件になります。土を耕したり、畝を作ったり、夏の日照りに耐えたりできる体力は必要です。

天候に左右される

収穫量の多さや少なさ、野菜の出来具合の良し悪しは天候に左右されます。野菜の安定した品質や収穫量を得るためには、天候を早めに見越して、台風対策や日照り対策をしなくてはなりません。

害虫対策が必要

アブラムシなどの害虫の他に、モンシロチョウやカラスなど鳥への対策も必要です。防鳥防虫ネットは必需品です。

無農薬栽培の場合は、畑の管理が一層、大変になってきます。常に畑を見守っていて虫を見つけたら取る、防鳥ネットが破れていないか点検するなど細かいチェックが必要になってきます。

深く根を張る根菜類、大きく育つ野菜も栽培可能

土耕栽培は大変な分、ほとんどの野菜を育てることができます。水耕栽培では難しい根菜類や、トウモロコシなどの大きく育つ野菜も可能です。

連作障害がある

同じ場所に同じ種類の野菜を植え続けると、成長が阻害されるというのが連作障害です。家庭菜園の場合、スペースも広くなく好きな種類の野菜を植え続けることもあって連作障害が起こりやすいです。

計画的に植える場所を変えたり、相性のいい野菜どうし(例えばトマトとバジル)を並べたり(コンパニオンプランツといいます)対策が必要です。

栽培した野菜の特徴

土耕栽培でとれる野菜と、水耕栽培でとれる野菜では違ってきます。特徴をみてみましょう。

味や香りが濃い

土のなかで根をはって成長していく過程は、野菜にとってかなり過酷な環境です。害虫や細菌はもちろんのこと、土で根を押さえつけられること自体、種や小さい苗にとっては過酷です。

そんな環境で育った野菜は、味や香りが濃く葉っぱも硬くしっかりしています。

環境や気候によって質が安定しない

十分な日照りが必要な夏野菜や梅雨時の長雨が必要な里芋などのイモ類など、野菜に応じた環境や気候でないと質が落ちたり、収穫も少なくなります。

水耕栽培と植物工場の違い

植物工場とは、天候や異常気象などの影響を受けずにクリーンな環境で一年を通して安定した栽培ができる施設のことです。

会社規模のものから自宅の空きスペースまで、管理されて栽培するなら、そこが植物工場になります。

「植物工場」とは日本人が考えた造語です。

植物工場とは

植物工場の大きな特徴は、自動制御装置で環境条件を管理して一年を通じて安定した質と収穫を目的に植物を栽培することです。

環境条件を完全に制御した施設で行う

植物工場で栽培に必要なクリーンな環境にするためには、あらゆる環境条件を管理する自動制御装置の設置が必要になってきます。

温度、湿度、光、培養液、CO₂濃度など

温度や湿度の管理はもちろんのこと、日照、養液(水に液体肥料を混ぜたもの)、CO₂濃度にいたるまで管理できる自動制御装置の設置が必要です。

水耕栽培のほか土を使うこともある

植物工場には2種類あって、人工の光(LEDライトなど)を使って栽培する「完全密封型」と、太陽光を利用して栽培する「太陽光利用型」があります。

温室ハウスの中で太陽光を利用する「太陽光利用型」の場合は、土を使うこともあります。

水耕栽培は土を使わずに本当に野菜ができるの?土耕栽培との比較のまとめ

水耕栽培と土耕栽培の違いをわかっていただけましたか。どちらがいいとか悪いとかではなく、野菜を栽培する方法には2種類ある、ということをまず理解してもらえたと思います。

植物工場の良さは、エアポンプなどの装置を使って、根腐れ防止や養液の管理を行えるところならどこでも植物工場になるというところですね。

自宅に植物工場をもつ、ちょっと考えるだけで楽しくなってきませんか。