刺繍の歴史について徹底解説!

刺繍は古い歴史があるといわれています。中国では3000年前から、周の『礼記』に養蚕や刺繍に関する記載があり、日本では刺繍には悪い物から守る呪術的な意味合いで、子どもの着物の背中に刺繍をする「背守り」がありました。

ヨーロッパでは、古代エジプト時代の墓やピラミッドから、ビーズ刺繍の布が発掘されているということです。古代エジプト時代の刺繍が、やがてヨーロッパ刺繍の礎になったということですが、フランスや東欧、北欧と刺繍の歴史は古く、いずれも起源は明らかではありません。

中世になると、刺繍は上流階級の女性の教養として広まっていきます。17世紀には衣服やカーテンなど贅沢な美術品として、階級やステイタスのシンボルを表していました。

刺繍の歴史

刺繍の歴史は古く、起源は諸説あり、はっきりとはわかっていません。

歴史が古く、正確な起源は不明

世界中で古くから衣類や布製品の装飾として利用されている刺繍は、バリエーションも多く歴史も複数あります。

中国では3000年前から、ヨーロッパでは古代エジプト時代から、そして日本でも古くから刺繍を施した服が発見されています。いずれも、宗教や階級、呪術などの意味合いがありました。

正確な起源は不明ですが、その後こうかな美術品や装飾品、民族衣装や女性の教養として、世界中に広まっていきます。

国や文化によって様々なバリエーションがある

刺繍の種類は世界中にたくさんあり、国や文化によってたくさんのバリエーションに分かれています。

フランスでは、1920年代に「刺繍新聞」というものも発行されています。

ヨーロッパには、北欧だけでも1つの国、例えばスウェーデンだけで「ブレーキンゲ刺繍」「ヤルブソー刺繍」「ツヴィスト刺繍」と5種類以上あります。ハンガリーやポルトガルといった東欧では、スカートやブラウス・ベスト・エプロン・靴下に美しい刺繍を施した民族衣装があります。

オーストリアのハプスブルク家が発祥の「プチポワン」は、今でも1点ものの高級バッグとして作られています。日本でプチポワンを扱うお店では、バッグや小物のほんの一部に刺繍を施しています。

ヨーロッパ刺繍

ヨーロッパでは、古くから刺繍の歴史があります。

ヨーロッパ刺繍の歴史

エジプトの遺跡から刺繍が見つかっており、ローマでさらに発展

ヨーロッパの刺繍は、古代エジプトから伝承され、その後ローマで発展していきます。世界各国で織物貿易が盛んに行われ、アイデアや技術がヨーロッパ各地に広まっていったと考えられています。

ヨーロッパ各地でも刺繍が広がり、信仰や身分の高さを示す手段などに使われたことも

中世のヨーロッパは教会の刺繍の中心で、聖職者の衣には地位が高くなればなるほど、上の者には豪華な刺繍が施されていました。

中世の時代の刺繍には、信仰を明確化し神を賛美する意味合いがありました。美しい刺繍は、王宮内の王侯貴族たちにも愛され、彼らの纏う衣装を、社交界の象徴として絢爛豪華に飾っていました。

宗教や特権階級の中で、発展し広まった刺繍は、贅沢な美術品で身分の高さを表すシンボルのようなものでした。

庶民にも広がり、各地域でバリエーションが広がる

17世紀後半になると、一般家庭にも刺繍が広がり、誰もが刺繍を気軽に楽しむことができるようになります。

18世紀には、一般向けの刺繍モチーフが女性誌に登場します。衣服の衿・袖・裾、ランチョンマット・クッションなどに施されるようになります。それが民族衣装に発展していきます。

ヨーロッパ刺繍の代表例

ヨーロッパ刺繍の代表的なものには、北欧、東欧、西欧、南欧とそれぞれ特徴ある刺繍が広がっていきます。

簡単なものでは、小中学生の教材で人気の「スウェーデン刺繍」(スウェディッシュウィーヴィングまたハックウィーヴィング)があります。クッションカバーやブックカバー、テーブルセンターなどを学ぶことができます。

1800年フランス発祥のクロスステッチ刺繍も、簡単に学べると刺繍の教材や本が多く出回っています。

フランス刺繍のシルク刺繍、リボン刺繍はハンカチや18世紀の女性たちのドレスを飾ったり、カードにも刺繍をしていました。

スウェーデンやポルトガル・フランス・ハンガリーでは刺繍の種類が多くあります。イギリスのサンプラー刺繍・ビーズ刺繍・ニードルポイント、ハンガリーのカロチャ刺繍、ポルトガルのマデイラ刺繍などがあります。

中国刺繍

古くから受け継がれている世界的に有名な刺繍には、ヨーロッパ刺繍以外に中国刺繍というのもあります。

中国刺繍の歴史(インドとの関係を紹介できれば紹介する)

中国とインドは、国境を接するため古くから文化や民族などの交流があり、インド文化圏と呼ばれるベトナムは中華文化圏、チベットはインド文化圏と、東南アジア・南アジアは両方の文化や建築・宗教と曖昧な文化を継承し続けています。

中国の刺繍の歴史は古く3000年近く前から刺繍に関する出土品「毛織物に簡単な刺繍を施したもの」も存在し、古い書物、周の『礼記』への記載もあります

一方、インドのカシミール刺繍やミラー刺繍はヨーロッパ刺繍の文化を受け継ぎ、やがて金糸や銀糸を使ったきらびやかな刺繍は中国へと伝わっていきます。

特に中国皇帝が身にまとったきらびやかな刺繍文化は、ヨーロッパ刺繍と同じく「地位の象徴」となります。皇帝の服には龍が、官吏の服にも階級によって「麒麟・虎・鶴」などの様々な紋様や動物が刺繡されるようになりました。

やがて、中国では「刺繍局」が管理し、皇族が着用する衣服や布団など、日用品も作られるようになります。

広大な中国では、その技術が舞台衣装や工芸品へと受け継がれ、現代の「中国四大刺繡」と呼ばれる中国独自の刺繡文化へと発展していきます。

中国四代刺繍

それでは、中国四代刺繍にはどんなものがあるのでしょうか。

蘇州の「蘇繍」

蘇繍はおよそ2500年前、呉の国が当時の都を絹織物と養蚕業が盛んであった蘇州に置いた頃から盛んに行われてきた刺繍です。

極めて精美な蘇州刺繍は清王朝時代に多様な技法が考案され、絵画のような刺繍が大流行します。しかし、1949年に蘇州刺繍の工芸師が一時途絶え、現在改良に努めています。

広州の「粤繍」

広東州では蘇州刺繍と同じような技法で粤繍(えつしゅう)、そして汕頭と呼ばれる刺繍が盛んに行われています。

汕頭刺繍は、1858年ヨーロッパの宣教師が刺繍の文化が伝え、中国古来の刺繍が融合したのが始まりといわれています。現在は中国三大刺繍の1つになっています。

湖南の「湘繍」

蘇繍や粤繍の良い部分を取り入れたのが、湘繍です。湘繍は刺繍工芸品で、透明なガラス糸、硬緞や混ぜ織り繻子、ナイロンなどを使用した精細な刺繍工芸品です。

四川の「蜀繍」

蜀繍は別名川繍と呼ばれています。サテンの生地にカラーの絹糸を用いて山や川、花・昆虫・鳥・魚・人を立体的に描く刺繍です。生き生きとした図柄は、色鮮やかで縫い目が細かく変化に富むのが、この地方の刺繍の特徴です。

日本の刺繍

日本にも着物や帯、小物など古くからの刺繍文化が残されています。

日本には中国から刺繍が伝わったと言われる

日本の刺繍の多くは中国から伝わった技法を取り入れているものが多く存在します。

日本刺繍:和装の装飾文化や仏教の布教の中で発展

日本刺繍は、和装の装飾文化や仏教の布教の中で、全国に発展していきました。日本では京都で作られる日本刺繍を京繍、江戸(東京)で作られる日本刺繍を江戸刺繍、金沢で作られる日本刺繍を加賀刺繍と呼びます。中でも、京繍は日本伝統工芸として認定されています。

庶民的な刺繍には、木綿地の補強を目的とした「刺し子」と呼ばれるステッチもあります。刺し子は機能以上に伝統的な美しさがあるのも特徴です。

京繍(きょうぬい)

日本伝統工芸として認定されている京繍は、起源は平安遷都にさかのぼり、貴族の繍衣繍仏、武具などに活用され発達してきました。絹や麻の織物に絹糸・金糸・銀糸などを用いて刺繍されています。

また、刺繍の技法は15種類以上あります。

加賀繍(かがぬい)

日本での刺繍の始まりは、仏画を刺繍で表現した繍仏(しゅうぶつ) で、室町時代初期加賀繍は、仏教の布教に伴って京都から加賀地方へ伝えられたと考えられています。

江戸時代には、将軍や藩主の陣羽織や奥方の着物、加賀友禅などの加飾に使用されています。

明治以降になっても、加賀繍の伝統の技法は衰退することなく、大正から昭和にかけては半襟や帯地といった一般の人でも手に入れやすい和装小物の生産が始まります。

現代においても、高級呉服はもちろん、インテリアの開発や美術工芸部門への進出など今後の発展も期待されています。

加賀繍は、色鮮やかな絹糸や豪奢なうるし糸・金糸・銀糸で繊細な技法で縫い上げた立体的な図柄が特徴です。

江戸繍(えどぬい)

江戸繍(えどぬい)は、東京の刺繍屋さんに代々秘伝を含み継承されてきています。それぞれ専門分野(和服・幕・装束・舞台衣装・化粧まわし・旗・縫い紋・神社仏閣調度品・山車等)の刺繍職人の技を江戸繍と呼びます。

東京が産地ということで『江戸刺繍』といわれ、伝統工芸品の1つとなります。江戸幕府の繁栄とともに江戸刺繍は栄え今日に至っています。

東北で古くから伝わる刺し子(代表例:こぎん刺し)など

麻布や木綿布に保温、補強等のために木綿糸で補強したものが始まりとされています。実用目的の刺し子でしたが、美しい色合いやデザインが生まれ、現代に至っています。

刺繍の歴史について徹底解説!のまとめ

刺繍は、古くから階級や宗教を象徴するものでしたが、その後は庶民に広がり、現代にいたっています。そして、国や文化・地方によって多くの手法が受け継がれています。

近年機械を使った刺繍も多くありますが、手刺繍は素晴らしい手法の伝統工芸として、これからも受け継がれていってほしい文化です。